前立腺がん
このページでは前立腺がんの症状・診断・治療についてご紹介しています。
はじめに
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱の下にあるクルミほどの大きさの臓器です。そこにできる癌が前立腺癌です。
特に高齢者に多く、男性では3番目に多い癌です。
進行が遅く、ホルモン療法がよく効くため、早期癌の段階でみつかれば生命に関わることは稀です。
ただしいったん転移してしまうとホルモン療法が効きにくくなるので注意が必要です。
前立腺癌はリンパ節や骨(背骨や骨盤)に転移しやすいです。
症状
早期癌の段階では自覚症状はありません。
進行癌になると排尿障害や血尿、腰痛などがみられることがあります。
診断
PSA(前立腺特異抗原)は前立腺だけから分泌される物質で、前立腺の病気で血液中に増えてくるため、前立腺癌の診断や治療効果を判定するのに有用な腫瘍マーカーです。
前立腺癌以外でも前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇します。
PSA値(ng/mL) |
前立腺癌の確率 |
|
4以下 |
低い |
正常値なので精密検査を行う必要はありません。1~3年に1回程度PSAを測定すれば手遅れになることはないと思います。 |
4~10 |
20~25% |
ほとんどの場合、早期癌です。 |
10~20 |
30~50% |
前立腺の外まで浸潤する局所進行癌になっていることがあります。 |
20~50 |
50~80% |
リンパ節や骨に転移してしまっていることがあります。 |
50以上 |
80%以上 |
前立腺炎でない限りほとんどが前立腺癌であり、進行癌となっていることが多いです。 |
PSAが4ng/mL以上の場合、前立腺針生検を行います。
肛門から挿入した超音波で観察しながら、前立腺に針を12本刺し、組織を採取し、癌の有無、広がり、悪性度を確認します。
5分ほどの検査です。痛くないと言っては嘘になりますが、それほど強いものではありません。
直腸診で前立腺が硬く触れることがあります。
癌が見つかった場合、CT、MRI、骨シンチグラフィーなどで浸潤度や転移の有無を評価します。
治療
前立腺全摘除術
前立腺を摘出して、膀胱と尿道を結び合わせる手術です。
従来はお腹を切って行っていましたが、最近では腹部の小切開でDaVinciという手術支援ロボットを用いて前立腺全摘術を行うことが多いです。
癌に対する効果は一番強いですが、出血や周囲臓器損傷の危険性もあります。
性機能障害を気にされる方もみえます。また腹圧性尿失禁となることも問題です。
したがって高リスクの前立腺癌にはいい治療法だと言えますが、低リスクや高齢者には過剰治療となる可能性もあります。
放射線療法
前立腺に体外から放射線や陽子線を照射する方法です。
色々な種類の放射線療法があり、治療期間も1日で済むものから、5日間連続で照射するもの、7週間毎日通うものまでさまざまです。
また前立腺の中に2mmほどのチップを植え込む放射線療法もあります(密封小線源療法)。
放射線療法は頻尿や血尿、直腸出血が起こることがありますが、手術に比べて合併症が少なく、尿失禁が起こらないのが利点と言えます。
当院は名古屋徳洲会病院、春日井市民病院、名古屋大学医学部附属病院と提携しており、これらを希望する場合は紹介状をもって受診していただきます。
薬物療法
ホルモン療法
前立腺癌は男性ホルモンがあると増殖するため、男性ホルモンを薬でブロックすると前立腺癌の増殖が抑えられます。
通常1日1錠ビカルタミドという薬を内服し、リュープロレリンという薬を数か月おきにお腹に注射します。
副作用として、女性の更年期障害のように突然汗が出ることや、精巣が小さくなってしまうこと、肝機能障害などがあります。
いつまでも薬が効いていればいいのですが、そのうち薬が効かないタイプに変異すると生命に関わることになります。
したがって低リスクの前立腺癌や高齢者には適した治療法だと思います。
化学療法
高リスクの前立腺癌にホルモン療法を長く続けていると徐々に効かなくなってくることがあります。その場合に抗がん剤を用いることがあります。
癌のリスクによっては、これらの治療を組み合わせて行います。
治療後のPSAの上がり下がりで治療効果の判定を行うことができます。