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胃腸の不調

このページでは胃腸の不調の種類・症状・診断・治療についてご紹介しています。

胃腸の不調とは

 

 

胃腸の不調は、腹痛、胃もたれ、胸やけ、吐気、嘔吐、下痢、便秘などとして現れます。

原因は胃腸の炎症、消化酵素の不足、ストレス、細菌やウイルスの感染、食物アレルギー、薬物の副作用、食事の内容や量、過度のアルコール摂取などさまざまです。

 

日常生活に多大な影響を与えますし、重大な疾病の初期兆候であることもあります。

まずは、安静にして軽い食事を摂取したり、水分補給を行ったりすることが推奨されます。

しかし、症状が慢性化したり重篤であったりする場合は、医師の診断と適切な治療が必要です。

 

このページでは胃炎・胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、炎症性腸疾患、便秘症、過敏性腸症候群、感染性腸炎、胆石症、脂肪肝について説明しています。

 

胃炎、胃十二指腸潰瘍

はじめに

胃は食べ物をおおざっぱに消化する器官です。口から入った食べ物は2時間ほど胃の中にとどまり、胃酸で消化されます。

 

胃を傷つける因子(胃酸過多や刺激的な食べ物)と胃を守る因子(粘液や組織の修復力)のバランスが崩れると、胃の粘膜が傷つき、胃炎と言われる状態になります。胃炎が長期化・重症化し、胃にくぼみができると胃潰瘍と呼ばれます。

 

十二指腸は胃の次に食べ物が通る腸ですが、胃酸が濃い濃度で入ってくるため、ここにも潰瘍ができやすいです。

症状

みぞおちのあたりの痛み、不快感、膨満感、胃もたれ、胸やけ、食欲不振、黒色便といった症状が出ます。

 

注意しなければならないのは、こういった症状は胃がんなどが原因のこともあることです。下に述べるような治療をしても症状の改善がない場合は胃カメラなど精密検査が必要となります。

原因

攻撃因子が強い

胃酸過多や刺激的な食べ物やアルコールにより、胃粘膜が障害を受けます。加えてピロリ菌の感染も胃粘膜を傷つけます。

胃は強い酸性環境にあるため、昔は菌がいないと信じられていました。しかし1983年に胃粘膜の中に周囲をアルカリ性にして生存しているらせん状の細菌『ヘリコバクターピロリ』が発見されました。

ピロリ菌は幼少期に経口感染で感染すると言われていますが、その後自然に消滅することはほとんどありません。一方で、成人になってからは感染しても、すぐに消滅することが多いです。

ピロリ菌が感染すると胃に慢性的な炎症を引き起こします。この状態が数十年続くと、慢性胃炎(萎縮性胃炎)、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となります。さらに萎縮性胃炎の状態が続くと胃がんが発生しやすくなります。

ピロリ菌保菌者は非保菌者にくらべ胃がんの発生が10倍以上と報告されています。

防御因子が弱い

胃粘膜は胃酸という強力な酸に常にさらされています。

この胃酸から胃粘膜を守るために粘液が表面を覆っていますが、粘液の分泌が減少すると粘膜が傷つくことになります。

また傷ついても、すぐに修復されれば問題ないのですが、修復力が衰えると、慢性胃炎という状態になります。

治療

1.行動療法

リスクが高いのは免疫機能の低下、過度のストレス、不規則な生活習慣がある方です。

症状が軽いうちは、お腹にやさしい食事をこまめに摂る、ストレスを軽減する、アルコールやたばこを避ける、などの生活習慣の改善が有効です 。

鎮痛剤を飲んでいる方は、胃にやさしい薬かどうか確認する必要があります。

2.薬物治療
  • ヒスタミンH2受容体阻害薬/プロトンポンプ阻害薬、制酸薬
    攻撃因子である胃酸の分泌量をおさえたり、分泌された胃酸のpHを中和したりする薬です。
  • 胃粘膜保護薬
    粘液の分泌や組織の修復力といった防御因子を高め、胃粘膜を守ることで効果を発揮します。
3.ピロリ菌除菌

ピロリ菌検査が陽性で、胃カメラでがんがないと確認ができた方にはピロリ菌の除菌をおすすめします。(胃がんがあればピロリ菌の除菌などしている場合ではないので)

 

日本では年間150万人近くの方がピロリ菌の除菌治療を受けています。

1種類の胃薬と2種類の抗生物質の合計3剤を同時に1日2回、7日間内服する治療法です。

飲み終わってから2~3か月たったところでピロリ菌が除菌できたかチェックする必要があります。この時点でピロリ菌が除菌できる確率は90%ほどです。

もし除菌できなかった場合には2次除菌と言って別の抗生物質に変えて7日間内服していただきますが、ここまですれば99%除菌できます。

薬を正しく服用しないとピロリ菌が耐性化してしまいますので、必ず指示通り服用してください。

 

ただし除菌治療は大腸の中の善玉菌もやっつけてしまいますので、副作用が出る場合もあります。

下痢、味覚障害程度であれば最後まで除菌治療を完遂してほしいですが、発熱や腹痛を伴う下痢、粘血便、発疹などあればすぐにご連絡ください。

 

ピロリ菌の除菌に成功すると、胃もたれがなくなる方をよく経験します。

胃がんの発生率は除菌しない場合に比べ3分の1に抑えられると報告されていますが、初めからピロリ菌がいない方に比べればまだ高いので、定期的に胃がん検診は受けた方がいいでしょう。

逆流性食道炎

はじめに

逆流性食道炎は、胃酸などの胃の内容物が食道に逆流し、食道の内壁を刺激して炎症を起こす病気です。

以前は日本人に少ない病気でしたが、食生活の欧米化などで患者数が増えています。成人の10〜20%が該当するとされ、特に高齢者に多くみられます。

 

予防には、脂肪や酸味のある食品の制限など食事の改善、食事後の胃の過度の圧迫を避ける、食事の後に少なくとも2〜3時間は横にならない、喫煙やアルコールの摂取を控える、ストレスを軽減するなどが有効です。

症状

主な症状は胸焼け、呑酸(酸っぱいもの喉元までが上がってくること)です。

喉の違和感・炎症、咳、不眠などにいたることもあります。

原因

食道胃接合部のゆるい方や、胃が横隔膜の上にはみ出ている状態(食道裂孔ヘルニア)の方に多いです。

これらの状態は薬で治ることはなく、そういう体質ということで一生付き合っていくことになります。

 

ほかに、高脂肪食、アルコール、カフェインの過度な摂取、喫煙、腹部の締め付け、ストレス、加齢などが原因として挙げられます。

治療

患者さん自身でできることとしては、脂肪や酸味のある食品を控える、食後の胃の過度の圧迫を避ける、食後2〜3時間は横にならない、喫煙やアルコールの摂取を控える、ストレスを軽減するなどが有効です。

 

薬物療法としては、胃酸を抑制する薬、胃の動きをよくする薬、食道粘膜を保護する薬、などを使用します。

機能性ディスペプシア

はじめに

機能性ディスペプシアという病名はあまり聞き覚えのない言葉だと思いますが、要は『胃の働きが悪い状態』ということです。

 

内視鏡で観察しても胃粘膜に異常がないにもかかわらず、慢性的な胸焼け、胃痛、吐き気、不快症状が起こります。

胃炎と症状がほとんど一緒であり、また胃炎と機能性ディスペプシアが併存することもあります。

症状

食後の胃もたれ(膨満感)、食べ始めてすぐに満腹になってしまう感じ、みぞおちの痛み、消化不良、吐き気などが慢性的に続きます。

原因

特に胃下垂の女性に多い印象がありますが、ストレス、過度の食事、喫煙、アルコール摂取、胃炎や胃潰瘍の既往歴などがあるとなりやすいようです。

治療

生活習慣で気をつけることと言えば、規則正しくバランスの取れた健康的な食事習慣の実践、1回の食事量を減らすこと、ゆっくりと噛んで食事すること、ストレス管理、禁煙、適度な運動などが推奨されます。


薬物療法としては胃の動きをよくする薬を処方します。胃炎と症状が似ているため、まずは頻度の高い胃炎の薬を内服していただき、効果がなければ胃の動きをよくする薬を試してみることも多いです。

炎症性腸疾患

はじめに

炎症性腸疾患とは腸管に炎症がおこる病気の総称ですが、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。

潰瘍性大腸炎では主に大腸のみが、クローン病では口から肛門までの消化管の様々な部位で炎症が起きます。

どちらも国の指定難病とされています。

1. 潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に、直腸から連続して広がるような浅い潰瘍やびらん、炎症が生じる病気です。

日本にはおよそ22万人の患者さんがいると推計されています。10~30代の若い方に多いですが、小児や50歳以上でも発症する可能性があります。

図1 大腸のみに起こる連続性の浅い炎症

主に腹痛、下痢、血便(合わせて粘血便)などが起こります。

調子のよいとき(寛解期)と悪いとき(活動期)があり、症状の現れ方は患者さんによって様々ですが、寛解期のほうが長いという方が多いです。


若年者に腹痛、粘血便、2~3週間以上続く下痢がみられる場合、大腸カメラを行い、炎症や潰瘍の形態、病変の範囲を確認します。

場合によっては大腸粘膜を一部採取して病理検査に提出することもあります。


薬物療法としては整腸剤や下痢止めによる対症療法に加え、腸管の炎症を抑える薬を内服、もしくは注腸で使用します。

重症例では近年開発された点滴薬を使用します。

 

治療によって状態が落ち着いた場合には、ほとんど治療をしなくてもよくなることもあります。一方で、発症後長期間を経ると大腸がんが発生することがあるため、症状が落ち着いていても定期的に大腸カメラをしたほうがいいでしょう。

2. クローン病

口からお尻までの消化管のどの部分にも炎症や潰瘍が発生する疾患です。

日本にはおよそ7万人の患者さんがいると推計されています。10~20代の若い方に多く、男女比は2:1で男性に多いです。

図2 消化管のどこにでも起こる非連続性の深い炎症

症状は潰瘍性大腸炎と似ていますが、腹痛、下痢、肛門からの出血、体重減少などが起こります。

 

炎症の部位によって、肛門の痛みや腫れ、肛門の狭窄によって便が出にくくなるといった症状が現れます。

切れ痔のような傷が肛門の皮膚に生じ、そこに感染すると肛門が腫れて強い痛みが引き起こされるので、痔と診断され治療を受けることになる場合があります。その時はクローン病だという診断が遅れることもあります。

 

調子の良い時(寛解期)と悪い時(活動期)を長期にわたって繰り返します。

図3 クローン病の肛門会陰病変

大腸カメラでは大腸の粘膜に非連続性に潰瘍が確認されます。

また大腸は正常でも小腸だけに炎症が起こることもあるため、小腸の検査(小腸造影検査、カプセル内視鏡)もする必要があります。

 

クローン病の多くは継続的な治療が必要となります。寛解期でも治療を長く休んでいると、腸の狭窄や瘻孔が生じ、手術が必要となることもあります。

便秘症

はじめに

胃や少量で消化された食べ物は液状となって大腸まで送られ、水分が吸収されて段々と固形になっていき、肛門から排泄されます。

もし便塊が何日も大腸内にあると水分吸収が進むため、便塊がウサギの糞のように硬く小さくなっていくことになります。

 

便秘症の定義としては、3日以上排便がない状態、便が硬いために強くいきまなければ排泄できない(排便困難感)、毎日排便があっても常に便が残る感じがする場合(残便感)を指します。また便秘があると血圧が上がったり、排尿困難となる方もみえます。

 

女性の方がなりやすいですが、年齢とともに割合が増えていきます。女性の方が腹筋が弱いこと、女性ホルモンの影響、などが原因として挙げられます。

 

図4 便秘症有病率(%) 国民生活基礎調査2016年より

便秘を自覚している、もしくは便秘薬を服用中の方の割合(%)

分類

弛緩性便秘(大腸の動きが悪い)

大腸の動き(蠕動)が低下しているため便が長く大腸内にとどまり、水分が過剰に吸収されるため便が硬くなるタイプです。

便秘の中で最も頻度が高く、女性や高齢者に多いです。運動不足、食物繊維不足、腹直筋の筋力低下なども関与しますので気をつけましょう。

また薬(麻薬、鎮咳剤、降圧剤、制酸薬、鉄剤、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、抗不整脈薬など)によって大腸の動きが悪くなることもしばしばあります。

痙攣性便秘(大腸の過緊張)

副交感神経の過度の緊張によって、大腸が過度に収縮してしまい、便がうまく肛門側に送り出されないタイプです。

ウサギの糞のようにコロコロとした便になることが多いです。ご飯を食べると下腹部痛や残便感といった症状が出る方もみえます。

過敏性腸症候群で起こる便秘はこのタイプで、便秘と下痢を交互に繰り返すこともあります。

直腸型便秘(直腸に便がとどまる)

便が直腸まで到達しても便意にとぼしく、排便にいたらないタイプです。

高齢者や寝たきりの方、朝が忙しい方に多いです。

できることなら朝ご飯を食べた後、30分ぐらいゆっくりする時間を取れるといいですね。

器質性便秘

腸管閉塞(イレウス)、腸管の癒着、大腸がんなどがあって腸管の内腔が狭いことにより、小腸や大腸の通過障害がおこるタイプです。

このタイプで安易に下剤を使用すると腸管穿孔を起こす恐れがあるので注意が必要です。

急速に進行する便秘や腹痛を伴う場合は、ご自身で判断せず、病院にかかりましょう。

治療

予防には、食物繊維や善玉菌の積極的な摂取、水分摂取量を増やすこと、適度な運動やストレス管理が有効です。

下剤には複数の種類があります。腸管を刺激する薬(センノシドやピコスルファート)は効果が高いものの、毎日使うと薬なしに排便できない状態になってしまうため、できれば毎日使うのは控えた方がいいでしょう。

 

過敏性腸症候群

はじめに

過敏性腸症候群は、慢性的な腸の機能障害を特徴とする病気です。

原因ははっきりとは分かっていませんが、腸の運動や感覚の異常、腸の炎症、腸内細菌の異常、ストレスなどの関与が考えられています。

女性や若年層に多くみられ、ストレスが重なる場合に症状が悪化する傾向があります。

症状

主な症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などです。男性は下痢、女性は便秘になりやすくなります。

症状は個人によって異なり、頻度と重症度も異なります。例えば、複数日間隔で下痢と便秘を交互に起こしたり、少しでもストレスや不安を感じると下痢をもよおしたり、腹痛の後に粘液が排泄されたり、おならが出ることへの不安が高じて逆におならが何度も出たりすることがあります。

治療

予防には、食物繊維や発酵食品といった整腸作用のあるものを規則正しく食事すること、適度な運動やストレス管理に効果があります。

薬物療法としては、下痢型には腸管の動きをおさえる薬、便秘型には排便を促す薬、混合型には便の硬さを適度にコントロールする薬が用いられます。

感染性腸炎

はじめに

感染性腸炎は、細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体が感染し腸の炎症を引き起こす病気で、胃腸風邪や食中毒のことです。食べ物や飲み物を介した病原体の摂取や、病原体がついた手で口に触れることから起こることが多いです。

一般的な病原体は、大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、ロタウイルスです。

 

リスクが高いのは高齢者や免疫力が低下している方、旅行者、衛生環境が悪い地域に住んでいる方です。

流行は季節によっても変わります。保育施設や学校、高齢者施設などでは流行に注意が必要です。

 

予防の基本はトイレの後や調理・食事前の手洗いです。流水とせっけんで丁寧に行いましょう。清潔な水源の使用、食材の十分な加熱、 便器の清掃、手指消毒も予防に有効です。

症状

発熱、下痢、嘔吐の3つが主な症状です。加えて原因病原体によっては、腹痛、血便、白色便がみられることもあります。

原因

主な病原体としては以下のようなものがあります。

ウイルス性腸炎
ノロウイルス

11月から6月(12月がピーク)に流行する胃腸風邪の原因としてもっとも多いとともに、食中毒の原因にもなります。

カキやアサリなどの貝類に多く潜んでおり、十分に加熱せずに摂取すると感染する確率が高くなります。

 

感染力が非常に強く、接触感染や飛沫感染によって広がります。吐物や便といった汚物とともに多く排出されるため、保育園や高齢者施設での集団発生がしばしば見られます。

 

感染して1~2日経過すると吐き気、下痢といった消化器症状が現れます。発熱はみられても軽度のことがほとんどです。

 

通常は特別な治療をしなくても1~2日で自然に回復します。ただ感染者の便の中には症状が改善したあとも3~7日間ほどノロウイルスが排出されるため、徹底した感染対策を講じるようにしましょう。

ロタウイルス

1月から6月(3~4月がピーク)に流行する胃腸風邪の原因病原体で、特に乳幼児で重症急性胃腸炎の原因となります。

感染力が非常に強く、生後6か月から2歳をピークに、5歳までにほとんどの子供がかかると言われています。

 

初回感染時の症状が最も重く、感染を繰り返すごとに免疫の獲得により症状が軽くなっていきます。そのため未感染のうちに経口ワクチンを接種すると初回感染時の重症化を防ぐことができます。

 

ロタウイルスに感染すると、2日間の潜伏期間を経て初期に39度台の高熱が出ることが多く、嘔吐は1~3日で治まりますが、ひどい下痢が1週間ほど続くことが多いです。

感染すると胆汁分泌が悪くなるため、便がレモン色や白っぽい色になることがあります。

アデノウイルス

アデノウイルスは風邪や結膜炎の病原体として知られていますが、小児における感染性腸炎の主要な原因病原体でもあります。

下痢や腹痛が主な症状で、発熱や嘔吐はあまりみられません。下痢は1週間程度続きます。季節を問わず発症がみられます。

細菌性腸炎
病原性大腸菌

大腸菌は人や動物の大腸内に存在する細菌です。多くの種類があり、ほとんどは害がありませんが、中には下痢などの症状を引き起こす大腸菌があり、病原性大腸菌と呼ばれています。

病原性大腸菌は約170種類ありますが、そのうちベロ毒素を産生し出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群を起こすものは腸管出血性大腸菌と呼ばれます。

 

重症化するものの多くはO157が原因病原体です。4~8日と長い潜伏期間を経て、激しい腹痛をともなう頻回の水様便のあとに血便が出現します。

発熱は軽度です。患者の6~7%では発症数日~2週間後に溶血性尿毒症症候群や脳症といった重篤な合併症を発症する場合があるため、高齢者や基礎疾患のある方では注意が必要です。

サルモネラ

もっとも代表的な食中毒の原因菌です。

8時間から4日後の潜伏期間を経て、悪心・嘔吐で始まり、数時間後に発熱、腹痛、下痢、血便がみられます。下痢は3~4日続きます。

腸炎ビブリオ

食中毒の原因病原体として2番目に多いです。

夏期に流行がみられます。潜伏期間は12時間ほどで、強い腹痛が特徴です。水様性や粘液性の下痢がみられ、まれに血便がみられることもあります。

ほかに発熱、悪心・嘔吐がみられます。下痢は1~2日で軽快します。

カンピロバクター

食中毒の原因病原体の一つです。一般に細菌性食中毒は夏期に多発しますが、カンピロバクターによる食中毒は冬季に多いのが特徴です。

2~5日間の潜伏期間を経て、下痢、血便、粘液便、腹痛、発熱、悪心、嘔吐がみられます。下痢は通常1~3日続きます。

赤痢菌

日本でも戦後しばらくは年間10万人以上の罹患者が報告されていましたが、1960年代から激減しました。

最近は主にアジア地域への渡航者が半数以上を占めています。

1~3日間の潜伏期間を経て、倦怠感、発熱、下痢、腹痛、しぶり腹、濃粘血便といった症状が見られます。

昔は激しい症状のことが多かったですが、近年では軽症で済むことが多いようです。

寄生虫による腸炎
アメーバ赤痢

名前は似ていますが、赤痢菌とは別物です。海外渡航中に衛生状態の悪いところで汚染された食べ物を経口摂取することで感染するのが一般的です。

症状としては2~3週間の潜伏期のあとの下痢、血便、腹痛で、最近海外渡航した方でこのような症状がみられたら本症を疑い、大腸カメラで診断をつけます。潰瘍性大腸炎と症状が似ており注意が必要です。

治療としてはメトロニダゾールという薬を内服します。

アニサキス

アニサキスの幼虫が寄生した魚介類を生食すると3~4時間後に胃壁や腸壁に潜り込みます。これにより激しい腹痛、吐き気、嘔吐が起こります。

アニサキスは人体の中では成虫になることはできず、数日程度で死んでしまうか便中に排泄されます。

胃カメラでアニサキスを摘出すると、急に痛みがなくなります。

治療

消化のいい食品を普段より量を減らして食べるようにしてください。

下痢や発熱で普段より体外へ水分や電解質が逃げてしまうので、スポーツドリンクを多く飲むようにするといいでしょう。

 

薬物療法としては、抗生剤、整腸剤、下痢止め、吐き気止め、解熱剤、腹痛止め、胃薬、などを適切に組み合わせて使います。

重症例では腸管を休めるために絶飲食とし、点滴治療を入院で行うことになります。

胆石症

はじめに

肝臓では消化液の一つである胆汁が産生されます。胆汁は肝内胆管を通って胆嚢内に一時的に蓄えられ、食後に総胆管を通って膵液とともに十二指腸から排出されます。

胆汁に含まれる成分が結晶化して固まると胆石になりますが、成分によってコレステロール結石、ビリルビン結石、黒色石に分けられます。

このうちコレステロール結石がもっとも頻度が高く、胆汁のコレステロール濃度が高くなることで発生し、肥満、女性、糖尿病、脂質異常症、遺伝などがリスク因子です。

 

ビリルビン結石は胆汁の細菌感染が原因で発生します。黒色石ができる原因は不明です。

できる場所によって呼び方が異なり、胆嚢結石が約8割、総胆管結石が約2割、肝内結石が2%ほどを占めます。

 

日本で胆石症になる人の数は食生活の欧米化や高齢化によって増えており、10人に1人は胆石をもっていると言われています。

症状

ほとんどは無症状です。症状が出る場合は、右の肋骨の下(季肋部)やみぞおち、右の背中や右肩に痛みが出現し、食後に現れやすいのが特徴です。

また血液中のビリルビン濃度が上昇すると皮膚や白目が黄色くなる症状(黄疸)や、褐色から黒色の尿(ビリルビン尿)が出たりすることがあります。

胆嚢や胆管に炎症を起こすと高熱が出るほか、細菌感染が加わると敗血症と呼ばれる重篤な状態になることもあります。

治療

胆嚢結石があっても身体に害を及ぼすのは全体の2割ほどです。つまり8割の胆嚢結石は治療の必要がありません。

痛みがみられる場合は手術を行います。胆石のみを取り除いても再発することが多いため、胆嚢ごと摘出する手術が行われます。

総胆管結石に対しては内視鏡での摘出や薬物療法、体外衝撃波結石破砕術が選択されます。

脂肪肝

はじめに

肝臓の細胞の中に水滴のような形で脂肪がたまっている状態です。

ガチョウに無理やりトウモロコシと脂分を食べさせて脂肪肝にした状態がフォアグラですね。

 

現代の飽食社会において脂肪肝はしばしば見られ、お酒が原因になったケースを除くと、30歳ぐらいから増えていき、成人男性の約3割、女性の約2割が該当すると言われています。

脂肪肝の多くの人は特に問題ありませんが、中には肝臓に「炎症」が起こる方がみえます。この炎症が長期に続くと10人に1人が肝硬変へと進行し、さらに10人に1人が肝がんを発症します。

原因

肝臓に入ってくる脂肪のうち、皮下脂肪や内臓脂肪などから溶け出す脂肪が約60%、肝臓の中で糖質を材料に新たに合成される脂肪が約25%、食事で摂取する脂肪が約15%です。

したがって食事で摂取する脂肪を控えめにすることと同じくらい、糖質を控えめにすることも大切です。

糖質は肝臓でグリコーゲンという物質に作り替えられ、肝臓と筋肉に貯蔵されます。糖質を摂りすぎるとグリコーゲン過剰となり、それが中性脂肪に作り替えられ肝臓の細胞内に貯蔵されるため、脂肪肝になっていきます。グリコーゲンを消費すれば中性脂肪への変換を抑えられるため、定期的に有酸素運動をすることも効果的です。

また、お酒の飲み過ぎも脂肪肝の原因になり、肝機能障害をきたします。

診断

血液検査

肝酵素が上昇します。また中性脂肪が高いことも多いです。

超音波検査

肝臓を観察すると、通常よりも白っぽく見えます。進行して慢性肝炎や肝がんの状態になっていないかも分かります。

治療

血中中性脂肪濃度が高ければ、中性脂肪を下げる薬を内服します。また肝機能障害があれば肝臓を保護する薬を考慮します。

しかし何より大切なのは食事や運動習慣を見直し、肝臓に溜まった脂肪が減るように努めることです。

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