男性更年期障害
このページでは男性更年期障害の症状・診断・治療についてご紹介しています。
はじめに
男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)は、男性の中年期から後半にかけて生じる一連の生理的な変化と関連する症状の総称です。
女性の更年期障害に似たような症状が現れることから、この名前が付けられました。
男性のテストステロンレベルは年齢とともに徐々に低下しますが、全員に症状がみられるわけではありません。
疫学研究によれば、10%以上の男性が男性更年期障害の症状を経験すると報告されています。
女性の更年期障害は閉経の前後5年間に起こりますが、男性更年期障害は、40歳以上のどの年代でも起こってきますし、終わりがはっきりしないことが多いです。
最近、増加しているのは定年後の男性です。環境の変化に身体的にも精神的にもうまく対応できず、ストレスがかかるのが原因と言われています。
症状
男性更年期障害の症状は多岐にわたり、個人によって異なります。
また男性には女性のように閉経があるわけではないので、男性の更年期障害は女性に比べて生理学的な変化がより緩やかで、突然の出来事ではないことが多いです。
性的機能の低下
性的欲求の減少、勃起障害が見られます。
精神的症状
不安、イライラ、抑うつ、情緒不安定、集中力・記憶力低下、やる気が出ない、などの精神的な症状が現れることがあります。
身体的症状
ほてり、発汗、疲労感、筋肉の減少、体重増加などが見られます。
睡眠障害
寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなり夜間の目覚めが増えることがあります。
診断
男性更年期障害の診断は、症状の評価と血中テストステロンの測定により行います。
症状の問診票(AMSスコア)
症状
なし
軽い
中程度
重い
非常に重い
1
総合的に調子が思わしくない
(健康状態、本人自身の感じ方)
1
2
3
4
5
2
関節や筋肉の痛み(腰痛、関節痛、手足の痛み、背中の痛み)
1
2
3
4
5
3
ひどい発汗(思いがけず突然汗が出る。緊張や運動とは関係なくほてる)
1
2
3
4
5
4
睡眠の悩み(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、寝起きが早く疲れが取れない、浅い睡眠、眠れない)
1
2
3
4
5
5
よく眠くなる、しばしば疲れを感じる
1
2
3
4
5
6
いらいらする(当り散らす、些細なことにすぐ腹を立てる、不機嫌になる)
1
2
3
4
5
7
神経質になった(緊張しやすい、精神的に落ち着かない、じっとしていられない
1
2
3
4
5
8
不安感(パニック状態になる)
1
2
3
4
5
9
からだの疲労や行動力の減退(全般的な行動力の低下、活動の減少、余暇活動に興味がない、達成感がない、自分をせかさないと何もしない)
1
2
3
4
5
10
能力の低下
1
2
3
4
5
11
憂うつな気分(落ち込み、悲しみ、涙もろい、意欲がわかない、気分のむら、無用感)
1
2
3
4
5
12
「人生の山は通り過ぎた」と感じる
1
2
3
4
5
13
力尽きた、どん底にいると感じる
1
2
3
4
5
14
ひげの伸びが遅くなった
1
2
3
4
5
15
性的能力の衰え
1
2
3
4
5
16
早朝勃起(朝立ち)の回数の減少
1
2
3
4
5
17
性欲の低下(セックスが楽しくない、性交の欲求がおきない)
1
2
3
4
5
合計点 17-26点:なし、 27-26点:軽度、 37-49点:中程度、 50点以上:重度
男性更年期症状がみられる方のうち、テストステロン低下型、境界型、正常型はそれぞれ1/3ずつと報告されています。
低下型、境界型の方はホルモン補充療法を検討することになります。
また甲状腺機能亢進症や糖尿病で男性更年期障害と似た症状を呈することがありますので、これらの確認はしておいたほうがいいと思います。
また前立腺癌が隠れている方にはテストステロン補充療法は禁忌となりますので、PSAの測定もしておいたほうがいいです。
治療
生活指導
運動を定期的に行い、筋肉量の増大に努めてください。筋肉を鍛えることにより、成長ホルモンと男性ホルモンの分泌が促されます。
また、ストレスの軽減、良質な睡眠の確保に努めてください。
漢方薬
症状に合わせて使い分けします。
イライラやほてりが強い場合は桂枝茯苓丸、倦怠感、易疲労感が強い場合は補中益気湯がよく使われます。
PDE5阻害薬
勃起障害が強い場合に検討します。
睡眠補助薬
睡眠障害が強い場合に考慮します。
できるだけ依存性の少ない、短時間作用型のものから開始します。
テストステロン補充療法
血中テストステロンが低い場合に行います。
2~4週間おきに症状が改善するまでテストステロンを筋肉注射します。