夜間頻尿
このページでは夜間頻尿の原因・診断・治療についてご紹介しています。
はじめに
夜寝てから朝起きるまでにトイレのために1回以上起きることを夜間頻尿といいます。
おしっこのトラブルの中でも、もっとも生活に支障を来たす症状とも言われています。
おおまかに言うと、50歳代で1回、70歳代で2回、80歳代で3回トイレに起きる方が多いです。
1回起きるだけなら全く起きない場合と比べてほとんど支障を来たしませんが、2回以上起きると様々な不具合が生じると言われています。
睡眠障害、寝不足により日中の活力の低下、QOL(生活の質)の低下、うつ状態、転倒や骨折の原因となるため注意が必要です。
当院は夜間頻尿治療専門機関として登録されています。
原因
原因は大きく4つに分けられます。
多尿
習慣的に飲水が多いパターンです。
高齢になってくると脱水予防のためこまめな水分摂取が推奨されていますが、必要量以上の水分を摂取してもメリットはありません。
1日の尿量が2000mlを超えている人は水分摂取を控えましょう。
またやたらと喉が渇くという場合、糖尿病や薬の影響ということもありますのでチェックする必要があります。
夜間多尿
夜間頻尿の大部分の原因が夜間多尿です。
若い人では抗利尿ホルモンの分泌が1日の中で変動するため、昼に尿が多く作られ、夜はほとんど尿が作られません。
加齢や不規則な生活習慣により、ホルモン分泌の日内変動がなくなり、夜も尿がたくさん作られるようになります。
また足に浮腫があるような方は、睡眠時に横になると足に溜まった水分が上半身に戻ってしまい、尿がたくさん作られるということも考えられます。
膀胱蓄尿障害
前立腺肥大症や過活動膀胱、骨盤臓器脱があると、日中だけでなく夜間も頻尿を呈することになります。
睡眠障害
眠りが浅いため、ちょっとした尿意でもトイレに起きることになります。
糖尿病や睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。
診断
まず重要なのが1日のうちどの時間にどのくらい排尿しているのかを正確に評価することです。
そのために排尿記録を2日分つけていただきます。
何時にどれだけ尿が出たかを記録するだけです。
これにより排尿間隔、1日の尿量、夜間の尿量、膀胱容量、床に就いてから最初にトイレに起きるまでの時間といった、非常に多くの情報が得られます。
尿流測定や残尿測定、超音波検査により、前立腺肥大症や過活動膀胱の評価をします。
以上の検査により夜間頻尿の原因を推測し、治療に移ります。
治療
原因を考えて治療をしていくことが重要です。
多尿が原因の場合
飲水制限が基本になります。体重60kgの方で1日尿量1500mLとするのが理想です。
いきなりそこまでいかなくても少しずつ減らしていくことで、徐々に夜間排尿回数も減ってくると思います。
糖尿病など隠れた原因があれば、そちらを治療することで夜間頻尿も改善します。
夜間多尿の場合
夕方以降の水分摂取を減らしましょう。
夕方に30分程度の散歩をすると身体にたまった水分が寝るまでに尿として排出されるため、夜間頻尿に効果がある人もいます。
また下肢の浮腫がある方は、マッサージをしたり、弾性ストッキングを用いることで浮腫が改善し、夜間にトイレに行くことが減ります。
薬物療法としては昼食後に利尿薬を内服したり、就寝前に抗利尿ホルモン製剤を内服したりします。
抗利尿ホルモン製剤(ミニリンメルト®)を内服すると数時間、尿の産生が抑えられますので、床に就いてから最初にトイレに起きるまでの時間が延長することが期待されます。
注意すべき副作用として低ナトリウム血症がありますので、飲み始めの1か月間は血液検査をする必要があります。
膀胱蓄尿障害の場合
前立腺肥大症や過活動膀胱の治療を行うと、日中だけでなく夜間の頻尿も改善することが期待されます。
睡眠障害の場合
眠りが浅いためにトイレに起きる方は睡眠剤が効果的です。
ただ夜間頻尿のために眠りが浅くなってしまっている方が睡眠剤を飲むと、逆にトイレに行くのがしんどくなったり、トイレに行くときにふらつく危険がありますので、睡眠剤を飲んではいけません。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は耳鼻科で診察してもらう必要があります。