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甲状腺疾患

このページでは甲状腺疾患の種類・症状・診断・治療についてご紹介しています。

甲状腺疾患とは

甲状腺は首の前面にある小さな腺組織で、全身の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しています。そこに発生する疾患としては、『機能』の異常と『形』の異常に分けられます。


甲状腺が過剰にホルモンを分泌するようになると、動悸、発汗、体重減少、不安感、手の震え、目の充血や突出などの症状が現れます。甲状腺機能亢進症の代表的な病気にバセドウ病があります。


これとは反対に、甲状腺のホルモン分泌が不足するようになると、疲労感、冷え性、体重増加、むくみなどの症状が現れます。甲状腺機能低下症の代表的な病気に橋本病があります。


甲状腺には割と高い頻度でがんが発生します。甲状腺がんは複数のタイプに分けられますが、進行の遅いおとなしいがんが多いです。


このページではバセドウ病、橋本病、甲状腺がんについて説明しています。

バセドウ病

はじめに

自己免疫の異常により甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる疾患です。有病率は人口1000人あたり0.2~3.2人と報告されています。

20~30代の女性に多く、男女比は1:3~5ほどです。

また、親、兄弟、祖父母がバセドウ病の方はそうでない方に比べて20~40倍ほどなりやすいと言われています。

症状

主な症状は、動悸、高血圧、発汗、体重減少、不安感、手の震え、目の充血や突出、多飲・多尿、疲労感、下痢、筋力低下などです。

未治療の状態が続くと、心房細動や心不全、骨折などが起こる可能性があります。

 

甲状腺はのどぼとけのすぐ下にありますが、全体的に大きく腫れてきます。女性は生理が止まることもあります。

炭水化物の多い食事をした後や運動の後などに手足が突然動かなくなる周期性四肢麻痺が起こることもあり、これは特に男性にみられます。

 

甲状腺ホルモンが高いときに大怪我や手術を受けると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に耐えきれなくなり、複数の臓器障害が起こることがあります(甲状腺クリーゼ)。したがって手術を受ける際は、術前になるべく甲状腺ホルモンを正常値まで調整する必要があります。

原因

バセドウ病は自己免疫疾患の一つです。

甲状腺ホルモンの分泌は、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンが甲状腺の細胞の表面に存在する甲状腺刺激ホルモン受容体を刺激することにより調整されています。

バセドウ病では、この甲状腺刺激ホルモン受容体に対する抗体が体内で作られてしまい、勝手に甲状腺を刺激し続け、甲状腺ホルモンの過剰分泌を引き起こします。

抗体が作られる原因は特定されていませんが、なりやすい体質を持っている方が何らかのウイルス感染や強いストレス、妊娠・出産などをきっかけに発症すると考えられています。

発病後は、ストレスにより悪化や再発をきたす可能性があります。また、喫煙は薬の効きを悪くしたり眼の症状を悪化させたりします。ストレスや喫煙を避け、規則正しい生活を送りましょう。

診断

甲状腺ホルモンにはT3とT4があり、これらの値が高いと甲状腺機能亢進症と診断されます。

どうして甲状腺ホルモンが高くなっているのかを調べるために、甲状腺刺激ホルモンや甲状腺刺激ホルモン受容体抗体を測定します。

また甲状腺が腫れていることがしばしばありますが、腫瘍などがないか超音波で甲状腺の内部を評価します。

治療

甲状腺ホルモンの分泌を抑制する薬として、メルカゾールやヨウ化カリウムを使用します。

薬でコントロールできない場合は、手術で甲状腺を摘出したり、放射線を放出する薬(放射性ヨウ素)で甲状腺組織を破壊したりすることで、甲状腺ホルモンが分泌できないようにし、その上で甲状腺ホルモンを補充します。

橋本病

はじめに

橋本病もバセドウ病と同じく自己免疫疾患ですが、免疫システムが誤って自分の甲状腺組織を攻撃することで慢性的に炎症が生じる病気です。

甲状腺に慢性炎症があっても大部分の方の甲状腺ホルモンは正常で、甲状腺機能低下症になるのは5人に1人程度です。

橋本病は非常に頻度の高い病気で、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人の割合でみられ、特に30~40代の女性に多いです。

症状

橋本病でも甲状腺ホルモンの分泌が正常であれば、治療は必要ありません。

甲状腺ホルモンが低下すると、疲労感、体重増加、冷え性、便秘、筋肉の弛緩、声のかすれなどの症状が現れます。女性は月経過多になることもあります。うつ病や更年期障害と間違われることもあります。甲状腺が腫れて首の圧迫感や違和感が生じることもあります。血液検査ではコレステロールが上がったり、肝機能障害がみられることがあります。

甲状腺組織が壊されて甲状腺ホルモンが血中に流出することで一時的に甲状腺ホルモンが過剰になり、「バセドウ病」のような症状がでることがあります。これは3か月以内でおさまり、その後は甲状腺ホルモン低下状態に戻ります。

原因

橋本病も自己免疫疾患の一つです。免疫系が誤って甲状腺組織を攻撃し、甲状腺ペルオキシダーゼなどの甲状腺関連のタンパク質に対する抗体を産生します。これにより甲状腺組織が炎症を起こし、甲状腺ホルモンの分泌が低下します。

強いストレスや妊娠・出産、海藻類・薬剤・造影剤などからのヨウ素過剰摂取をきっかけに、もともと橋本病だった方が甲状腺機能低下症を発症することで、橋本病と診断されるケースが多いです。

倦怠感などの甲状腺機能低下症状が強い場合、治療によって甲状腺ホルモンが正常になるまでは、昆布やひじきなどのヨウ素を大量に含むものの過剰摂取を控えることが必要です。

診断

甲状腺ホルモンのT3とT4が低いと甲状腺機能低下症と診断されます。どうして甲状腺ホルモンが低くなっているのかを調べるために、甲状腺刺激ホルモンや抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体を測定します。

また甲状腺が腫れていることがしばしばありますが、腫瘍などがないか超音波で甲状腺の内部を評価します。

治療

レボチロキシンという合成甲状腺ホルモンを内服し、甲状腺ホルモンを補充します。炎症の強いケースでは、抗炎症薬を使用することもあります。

甲状腺がん

はじめに

甲状腺がんは20-30代の女性がかかる主ながんの一つで、若い女性に比較的多いです。日本では1年間に男性が5000人ほど、女性が14000人ほど診断されています。

 

甲状腺は身体の表面に近いため早期発見しやすく、この段階で診断されれば命にかかわることはほとんどありません。

ただ甲状腺がんと一口に言っても細胞の種類によっていくつかのタイプに分けられており、悪性度も治療法もだいぶ異なります。

<悪性度が低いもの>

  • 乳頭がん
    甲状腺がんの約90%を占めます。しばしばリンパ節への転移が見られますが、きわめて進行が遅く、予後良好です。
  • 濾胞がん(ろほうがん)
    甲状腺がんの約5%を占めます。血液に乗って肺や骨などに転移しやすい傾向があります。
  • 低分化がん
    乳頭がんや濾胞がんのような高分化がんに比べると転移しやすいです。

<悪性度が高いもの>

  • 髄様がん
    進行が速く、リンパ節や肺、肝臓などに転移しやすい傾向があります。遺伝性の場合もあります。
  • 未分化がん
    進行が速く、甲状腺の周囲の神経や気管、食道などに浸潤したり、肺や骨などに転移したりしやすい、最も悪性度が高いものです。
  • 悪性リンパ腫
    甲状腺全体が急速に腫れたり、声のかすれや呼吸困難が起こったりします。

症状

通常は甲状腺のしこり以外の症状はほとんどありません。まれに違和感や嚥下困難、声のかすれなどの症状が出てくることがあります。

診断

  • 画像検査
    超音波検査によって甲状腺の形状やしこりの特性を評価します。またCTやMRI、骨シンチグラフィーによって、がんの拡がりを確認します。また放射性ヨウ素を使用したホルモンイメージング検査も有用です。
  • 血液検査
    甲状腺ホルモンの濃度を測定し、甲状腺の機能に異常があるかどうかを確認します。
  • 生検
    甲状腺腫瘍から細胞のサンプルを採取し、がんの有無や種類を確認します。

治療

手術によって甲状腺を部分的、あるいは完全に摘出する手術が行われます。

またがん細胞の残存や再発を防ぐために放射線療法が行われることがあります。

手術が不可能なケースや再発例では抗がん剤が用いられます。

進行が非常に遅いタイプの小さいがんでは、何も治療せず、定期的に検査だけするという選択肢もあります。

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