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生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう)

このページでは主な生活習慣病の種類・症状・診断・治療についてご紹介しています。

生活習慣病とは

 

生活習慣病とは食生活、運動習慣、喫煙、飲酒、睡眠等の生活習慣が、発症や進行に関与する疾患の総称です。

生活習慣病の中でも、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症は罹患人数が多い病気です。身近な病気ですが、初期には自覚症状がない場合が多く、放置しがちです。生活習慣病を長年放置すると、心臓病・脳卒中・腎臓病を発症する場合や、健康寿命が著しく低下し要介護生活になってしまう危険性もあります。

 

生活習慣病は、遺伝や社会環境など個人の責任ではない要因も関与していますが、ほとんどが長年の生活習慣の乱れが原因です。生活習慣病の予防としては、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、ストレス管理、良質な睡眠、定期的な健康チェックなどが有効です。

生活習慣を改めても数値の改善がみられない場合には薬物療法を始めます。
よく『薬を始めたら一生続ける必要がある』と思い込んでいる方がみえますが、決してそんなことはありません。
よい生活習慣を続けることで、徐々に薬を減らしていき、薬なしとなる方もしばしばいらっしゃいます。

このページでは高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症について説明しています。

 

高血圧

はじめに

高血圧とは血圧が高くなる状態のことです。上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上または下の血圧(拡張期血圧)90mmHg以上が高血圧の基準値です。

血圧は日中の活動により変動してしまうため、朝ご飯を食べる前の早朝血圧を目安に血圧管理を行うことが多いです。したがって高血圧の心配のある方は血圧計を購入し、自宅で定期的に血圧を記録することがとても大切です。

年齢とともに有病率があがり、70歳以上のおよそ70%が高血圧に該当します(図1)。

 

図1. 高血圧 有病率(%) 国民健康・栄養調査2019年より

収縮期血圧140mmHg以上,または拡張期血圧90mmHg以上,もしくは降圧剤を服用中の方の割合(%)

 

症状

高血圧であっても自覚症状のない場合がほとんどで、健康診断や人間ドックなどで指摘されて初めて気付くことが多いです。

しかし、悪化していくと、頭痛、めまい、呼吸困難、軽度の胸痛のような症状が現れる可能性があります。また、高血圧を長年放置すると、心臓病、脳卒中、腎臓病、動脈硬化、視力障害などにいたる可能性があります。

 

基準値

基本的には早朝血圧で収縮期血圧140mmHg以下、かつ拡張期血圧90mmHg以下を維持します。

ただ糖尿病や脳卒中、動脈瘤のある方はさらに厳格な降圧目標を設定します。反対にご高齢の方では、そこまでしっかりと下げる必要はないかも知れません。

 

原因

高血圧は主に、原因が特定できない原発性高血圧と、他の疾患や原因による二次性高血圧の2タイプに分けられます。

原発性高血圧の要因は、動脈硬化や塩分摂取過多、喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが考えられます。

二次性高血圧の原因は、副腎腫瘍や下垂体腫瘍、甲状腺機能異常、腎動脈狭窄などがあり、これらの原因を治療する必要があります。

 

治療

原発性高血圧の場合、日常生活の乱れが原因となるため、まずは生活スタイルの是正をすることが大切です。適度な運動や塩分を控えた食事、禁煙、適正体重の維持などを心がけてください。

こうした生活スタイルの是正を行っても血圧が改善しない場合には、降圧剤を用いた血圧の管理が行われます。降圧剤には、カルシウム拮抗薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬、α/β遮断薬、利尿剤などがあります。

 

脂質異常症(高脂血症)

はじめに

脂質異常症(高脂血症)とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質代謝に異常をきたした状態のことです。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪の血中濃度の異常により診断されます。なかでもLDLコレステロールの値にもっとも気をつける必要があります。

 

脂質異常症は動脈硬化の主要な危険因子であり、放置すれば脳梗塞や心筋梗塞などをまねきます。70歳以上の30-40%ほどの方が脂質異常症に当てはまります(図2)。

 

予防も治療も、基本は体重の適正化と食生活などの生活習慣の改善です。飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール摂取量の制限、不飽和脂肪酸の過不足ない摂取、食物繊維の積極的な摂取が有効となります。以前は卵を食べないように指導されていましたが、最近では食べ過ぎなければ問題ないという考えに変わってきています。

食生活の改善は継続が大切です。無理なく長期間続けられるように、おいしく楽しく食べられる工夫をしながら行いましょう。

 

図2. 脂質異常症 有病率(%) 国民健康・栄養調査2019年より

HDLコレステロールが40mg/dL未満,もしくはコレステロールまたは中性脂肪を下げる薬を服用中の方の割合(%)

 

症状

通常は無症状です。多くの場合、健康診断や人間ドックなどで指摘されて初めて気付きます。

しかし、脂質異常症が長期間にわたって放置されると脂質が血管の内側にたまるため動脈が硬くなり、脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などの原因となります。

また皮膚に脂肪の塊ができる、まぶたの周辺に黄色い斑点が現れる、肝臓に脂肪が蓄積することで肝臓の機能が低下する(脂肪肝、肝硬変、肝臓がん)、などの症状が現れることがあります。

 

基準値

LDLコレステロール

動脈硬化を予防するうえで、私は脂質異常症のなかでももっとも重要な指標と考えています。

男性では140mg/dL以下を目標にします。女性はホルモンの影響で高くなりがちですので、150-160mg/dL以下でいいと思っています。

心筋梗塞や糖尿病のある方は、100mg/dL以下、ないしは70mg/dL以下を維持することで予後が改善することが示されています。

HDLコレステロール

動脈壁に沈着した脂質を除去する働きがあるため、善玉コレステロールと呼ばれています。40mg/dL以上を目標とします。

中性脂肪

前日の食事内容により数値が大きく変動します。随時測定値が180mg/dL以下を目標とする勧告が学会から出されていますが、私個人的にはこれは厳しすぎると考えています。

脂肪肝により肝機能障害を来たしている方はしっかりと下げた方がいいでしょう。

 

原因と治療

脂質異常症の原因としては、遺伝的な素因に加えて、脂質や炭水化物の摂りすぎ、過食、飲酒といった悪い食生活のほか、運動不足も原因としてあげられます。

したがって治療の基本としては、食事内容を見直し、定期的に有酸素運動を行うことが不可欠です。(特に50代以下の若い方では効果的なことが多いと思っています。)

しかし、これは言うは易く行うは難しです。なかなか採血結果の改善が見られなければ薬物療法(スタチン、フィブラート、オメガ3脂肪酸、など)が必要になります。

 

糖尿病

はじめに

糖尿病は、インスリンの作用不足で血糖値が高い状態が慢性的に続く病気です。

インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンで、膵臓から分泌されます。(反対に血糖値を上げるホルモンは身体の中に複数そなわっています。生命の歴史の中で血糖値を上げることの方が死活問題で、高血糖が問題になることはほとんどなかったためでしょう)

 

糖尿病の恐さは、自覚症状がないうちに重篤な合併症が進展することです。高血糖状態が続くと血管が障害を受けるため、網膜症・腎症・神経障害(微小血管障害)のほか、心臓病や脳卒中(大血管障害)のリスクも高まります。

 

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。1型糖尿病は免疫系の異常により膵臓のインスリン分泌細胞が破壊されることが原因です。以前はインスリン依存型糖尿病とも呼ばれており、インスリンの自己注射が必要です。2型糖尿病は遺伝要因と生活習慣の乱れが重なって発症します。中高年の糖尿病の多くは2型で、このページでは2型糖尿病について説明していきます。70歳以上の20-25%ほどが糖尿病に該当します(図3)。

 

生活習慣の改善で糖尿病の発症を防ぐ1次予防、発症したあとに血糖値をコントロールして健康に生活する2次予防、さらに合併症の発症をくい止める3次予防という考えがあり、いずれも重要です。

 

図3. 糖尿病 有病率(%) 国民健康・栄養調査2019年より

これまでに医療機関や健診で糖尿病を指摘された方の割合(%)

 

症状

自覚症状がない場合が多いです。

しかし、頻尿、尿意切迫感、のどの渇き、満腹感が得られない、体重の急激な変化、倦怠感、集中力の低下、皮膚のかゆみ・乾燥・感染・潰瘍、視力低下、傷の治りが遅い、頭痛、めまい、などの症状が現れることがあります。

勃起不全の原因にもなるため、男性更年期障害で受診された方が、検査中に糖尿病と診断されることもあります。

 

基準値

空腹時の血糖値110mg/dL未満、食後2時間の血糖値140mg/dL未満が正常です。

ただし血糖値を管理の指標とすることの問題点として、直前の食事の影響や採血のタイミングにより数値が大きく変動することがあげられます。そこで糖がヘモグロビンと結合したHbA1cという数値が血糖管理の指標として用いられています。これは直前の食事の影響を受けず、過去1-2か月の血糖値を反映するため、とても便利です。

合併症を防ぐためには、若い方では6.5%以下、70歳以上では7.5%以下を目標とします。もちろん合併症があれば、もっと厳格な数値を目標とします。

 

原因

糖尿病はインスリンの量が足りない(分泌不全)か、インスリンの効きが悪い(抵抗性)ことによって発症します。

1.インスリンの量が足りない(分泌不全)

血糖値が上昇すると、それを下げようとインスリンを余分に出すため、膵臓が疲れて「インスリンを出す力」が弱っていきます。そうすると血糖値があがるため、さらに膵臓に負担がかかります。この状態は糖尿病が発症する前の段階ですでに始まっていて、糖尿病の初期と診断された時点でインスリン分泌能は、すでに健常者の半分程度にまで落ちていると報告されています。

日本人は遺伝的にこのインスリン分泌能が低い民族だといわれています。日本の長い歴史を考えると、もともとが粗食なうえに何度も飢饉に見舞われてきたため、血糖値があがりやすい遺伝子が残ってきたのでしょう。欧米人は肥満が進んでから糖尿病になる方が多いですが、日本人はやせていても糖尿病になる方が多いのはこのためです。

インスリン分泌能は親から子へと遺伝するため、糖尿病の親を持つ方は糖尿病になりやすいです。もちろん子が親と似たような食事習慣をとりやすいことも糖尿病の発症と関係しています。一方で、親が糖尿病でないのに糖尿病になる方もいます。時代とともにどんどん食生活が豊かになり、体を動かさない生活に変化していることが理由かも知れません。

2.インスリンの効きが悪い(抵抗性)

せっかく十分なインスリンが分泌されていても、その効きが悪いと血糖値があがってしまいます。

内臓脂肪が多かったり筋肉量が少なかったりするとインスリンの効きが低下します。一方で皮下脂肪は血糖値の悪化とあまり関係がないようです。やせていても糖尿病になる方は、筋肉量が少ないことが原因である場合があります。

3.そのほかの原因
  • 感染
    歯周病、インフルエンザ、肺炎、蜂窩織炎など感染により血糖値が上昇することがあります。
  • がん
    がん細胞の成長はインスリンの効き目を悪くするため、糖尿病の発見をきっかけに癌がんがみつかることがあります。
  • 妊娠 
    妊娠をきっかけに糖尿病になったり、もともとあった糖尿病が悪化したりすることがあります。
  • ステロイド薬
    ステロイド薬は体内で分泌される副腎皮質ホルモンと同様の働きをする薬剤です。他の病気の治療のために飲み始めたステロイド薬が血糖値を上げてしまい、糖尿病が悪化することがあります。

 

治療

2型糖尿病の治療の基本は適切な食事指導と運動です。

体重が4%程度減るだけでもインスリンの効きがよくなったという報告もあります。この際、筋肉量は維持するよう努めてください。有酸素運動によってカロリーを消費するとともに、強度の強い運動で筋肉量を増やすとよいでしょう。

 

ただこれも言うは易く行うは難しです。これでコントロールできなければ薬物療法を開始します。

血糖値の上昇を抑えたり、インスリンの分泌を促進したり、インスリンの効果を高めたり、糖分を尿中へ排泄したりする薬があります。最初は飲み薬から始めることが多いですが、血糖値が下がらないときは注射薬を併用することがあります。また、インスリンの分泌量が十分でないときは、注射でインスリンを補います。

 

高尿酸血症

はじめに

プリン体とは、DNAやRNAといった核酸の構成成分です。食べ物から摂取したり体内で合成されたりします。

このプリン体が肝臓で分解されてできる老廃物が尿酸ですが、ある程度までは血液に溶け、3分の2は腎臓から尿中に、3分の1は腸管から便中に排泄されます。

 

しかし、尿酸が過剰に生成されたり、腎臓が尿酸を十分に排泄できなかったりする場合に、血中尿酸濃度が上昇します。女性ホルモンには腎臓から尿酸の排泄を促す作用があるため、患者さんの大半は男性です。

他の生活習慣病は年齢とともに有病率があがりますが、高尿酸血症は30~40歳台の男性でもっとも高頻度にみられる点が異なります(25~30%ほど)。

症状

血液中の尿酸が高いだけでは自覚症状はありませんが、関節軟骨表面で結晶化した尿酸が何かの拍子に剥がれ落ちると炎症が起こり、痛風発作が起こります。

痛風関節炎は特に足の親指の付け根など小さい関節に生じることが多いです。そのほか、くるぶし、膝、アキレス腱などにも起こります。通常は数日でおさまりますが、高尿酸血症が放置されれば何度も発作を繰り返したり、関節の変形や運動制限などにいたることもあります。

 

また腎臓から尿中に排泄された尿酸が腎臓の中で析出すると尿路結石となりますが、これが尿管につまると背中に痛みが生じたり、腎機能障害を引き起こしたりします。

 

加えて近年では高尿酸血症が動脈硬化と関連していることも明らかになってきており、心筋梗塞、脳卒中、腎機能低下などのリスクとなることも数多く報告されています。

基準値

健康な方では9.0mg/dL以上で治療を開始します。

ただし尿路結石や動脈硬化性疾患のある方では8.0mg/dLで、痛風の方では7.0mg/dLで治療を開始します。

 

原因

尿酸が過剰に生成されるか、尿酸の排泄が低下することが原因です。日本人には排泄低下型が多いとされています。

また内臓脂肪型肥満では尿酸生成過剰と排泄低下がともに起こります。

アルコールを摂取すると肝臓でのプリン生成が亢進するとともに、その過程で産生された乳酸は尿酸の排泄を阻害します。

 

治療

生活習慣の改善として、食事量とアルコール量を減らす、プリン体の摂取を控える(ビール、レバー、魚の干物、魚卵)、有酸素性運動を行い内臓脂肪を減らす、などが有効です。

 

痛風と言えばプリン体を含む食品やプリン体offのビールのイメージが強いですが、最近はカロリー制限が重視されています。低カロリーで尿酸排泄を促進する食物繊維を多く含む食品(野菜やキノコ)はおすすめです。

 

薬物療法としては、尿酸の生成をおさえる薬と尿酸の排泄を促す薬があります。尿路結石のある方には尿酸の生成をおさえる薬を使用します。

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